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実績・実例

札幌・円山葬儀場問題 住民監査請求
(住民側を代理)

NHK北海道ニュース平成6年8月23日放映、その他の日刊紙

本件は、札幌市交通局所有地に民間業者によって葬儀場建設が計画されたことに、地元住民が反対運動を展開し、双方が、仮処分・損害賠償請求、住民訴訟を提起し合う事態となっていたところ、世間的にはある日突然解決したという事案である。この間の事情について、讀賣新聞平7・2・16朝刊は、「この問題は、同社が93年2月ころから、・・・市交通局所有地に葬儀場建設を計画したことに、地元住民や隣接する宗教団体が反対。同8月に土地の賃貸契約を結んだ市交通局も巻き込み、昨年3月から相次ぐ訴訟合戦に発展していた。」と報じている。

ところで、『この弁護士に聞け!』(日経BP社)というベストセラーがあるが、その中に、「住民エゴ助長する行政指導」という弁護士の法律コラムが掲載されている。本件と同じ葬儀場建設に関する事例を紹介しているが、「自治体が住民運動に協力しているという様相を呈していた」という事案について、解説者は「理不尽な行政指導」と批判している。

しかし、本件は、この事例とはまったく逆で、「自治体が住民をまったく無視」していたという様相を呈していた。市交通局が業者のために定期借地権を設定し、事前の説明会すら開催されないまま、着工されようとした事案である。

ところで、「住民運動」というと、必ず誰かによって、「住民エゴ」という評価がなされる。

しかし、「住民運動」、民主主義の基本的手段であるが、住民つまり「地域」という一部に属する人々が、「地域」に根ざした問題に取り組む以上、「部分の利益」を追求することとなるのは、むしろ当然のことであると言わなければならない。

それ自体は共通の価値・利害ではないが、皆が共通に持つ価値観に基づいて、受忍することができない価値・利害がある。身近なことで例えるなら、その人の思い出の品。他の人から見れば価値がなくとも、その人にとってはとても大切というモノがある。そして、他の人も、モノ自体は別の物だが、誰もが同じような考えで価値を認めるモノがあることを考えてみればよい。

民主主義というと、、「多数」の利益とか、「全体」の福祉とかいうイメージがつきまとうが、それだけに、「寛容」の視点が欠けてしまうと、個人の価値はすべてエゴと決めつけられかねず(集団リンチ)、それは全体主義という間違った方向導くための理念になってしまう。

事の実態を見ることなく、単純に、「住民エゴ」と評することは、容易だが、極めて危険なことである。
一つのもっとも簡単な判断方法は、自分を国民とか、市民とか全体の立場で見下ろすのではなく、自分の地域に同じことが起こったら、一体どう対応するか、ということである。

本件では、住民側は、運動の中で、行政の不透明な部分を指摘してきた。
報道された例だけみても、札幌交通局は、葬儀場建設について、周辺の多数町内会が同意していることを錦の御旗としていたが(住民エゴと世間に思わせるのは常套手段である。)、実は、半数の町内会が総会などを開かないまま、役員会や会長の独断で承諾書を提出していたのである(「行政が住民頭ごし」北海道新聞平成6年10月22日)。

なお、住民運動は、まさに“権利のための闘争”の集約形態であるが、闘争である以上、スローガンだけではなく、目的を達成するための戦略と戦術が不可欠である。本件では、裁判所を舞台にした動きだけ見ても、業者側は、建築工事妨害禁止の仮処分を申立て間接強制に至り、営業利益を失ったとして損害賠償請求事件を提起してきたし、住民側は、住民監査請求をし、住民訴訟を提起した(そのころになると、実はそろそろ解決の糸口が見え始めていた。)。
その他双方相手に対する告訴のほか、報道の対象とはならなかったこと諸々、本件は、まさしく、総力戦の様相を呈した闘争であった。私は、もっぱら参謀役であったが、十分手応えのある役割であった。

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