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コラム

自衛隊後方支援の是非

平成13年9月28日

小泉首相が進めようと試みる、米軍支援のための自衛隊の海外派遣の実現は、1992年PKO法が成立するに至るまでの過程に比べると、その進捗があまりに円滑だ。政治に不可避に登場するはずの反対派の存在が曖昧で、抵抗勢力の動きがまったく希薄だ。

確かに、テロを「人類すべてに対する共通の許し難い挑戦」であると抽象的に評する限り、それは真理そのものといえよう。自衛隊の活動への制約を緩和しようとする小泉施政の動きが、不可解なまでに順調に進んでいるのは、日本国民の多くが、米同時多発テロ事件を国際問題そのものと素直に捉えているからであろう。

しかし、テロが全世界の取り組むべき問題であるとしても、米国自身の動き自体にはナショナリズムに支えられている部分が極めて大きい。米国にとって、アフガニスタンへのミサイル発射は、ビンラディンの身柄引渡しと同価値であり、このことを明言した行動を進めるブッシュ大統領の支持率が90%を超え、歴代大統領の記録を更新したことは象徴的だ。世界で一番という威信の維持こそが、多民族国家である米国の国民統合の核心である。

一方、わが国はといえば、特に何かを企んでいるわけでもないのに、時の首相を始めとして政治家さえも、「日本は単一民族国家」と言い切る、そんなお国柄である。異質な者が存在することがむしろ当然であると意識し、前提として、国際政治はもとより、国内政治さえも考えようとする、他の諸国家、諸国民、諸民族とくらべ、わが国は、発想の原点において未熟であるように思われるのである。

このことは、小泉首相が、早急に批准しなければならないと断ずる二つのテロ関連条約が実は長年放置されており、殊に、99年に採択されたテロ資金供与防止条約を、サミットメンバー中わが国だけが、署名さえもしていなかったことからも窺われる。

私自身は、少なくとも心情的には、外国の漁船が領海内で漁獲をした場合でさえも、基本的に、これを遠巻きにしながら、退去せよと叫ぶほか対応のしようがないといった状況に、疑問を感じている。

しかし、だからといって、今この場面で、自衛隊の強化を急ぐことについて、私は、大きな不安を感じざるを得ない。米国による報復の結果は、いかに正義の闘いと自称しても、結果、ナショナリズムの衝突を本質とする動きになることは避けられないはずだ。戦後の日本人は、自身がナショナリズムという表現を用いることに消極的であるが、自国の自主性を確保するための見きわめをすることは、国際社会の現実においては、不可欠な営みである。

自衛隊、ひいては自衛権の問題の決断は、わが国が今後どのようなスタンスで国際社会の中で生存していくかに関わるものであり、想起される論点を余裕を持って徹底的に、しかも小気味のよい観念的な議論としてではなく、具体的な現実の問題として検討すべき事柄である。

逆説的な言い方をすれば、米国自体から敗戦の時にプレゼントされた印籠のお陰で、湾岸戦争の時のように、せいぜい国際的な皮肉を受ける程度で、独自の平和を享受し続け、自衛隊という存在について、現実的側面では、物的にも精神的にも積み重ねが皆無に等しい現状において、一挙に結論を出すべきものではないといわざるを得ないのである。

法律家らしからぬ無礼で皮肉めいた表現に過ぎたかもしれないが、実は、私の、小泉内閣に対する不安の表出とご容赦戴けると幸いである。私には、ある日突然カリスマに変異した小泉首相の表明する諸政策が、「打上げ花火」の連打に思えて仕方がないのである。きれいな後に何も残らないのは困る。そして、彼の言う「痛み」が、テロの標的になることさえも含むというのであれば、それは、不発のまま落下し、地上で破裂する花火にほかならない。

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