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「刑事事件」の不思議―夫殺害バラバラ事件の場合

夫殺害バラバラ事件で、殺人などの罪に問われた歌織被告人の公判が、4月10日、東京地方裁判所で開かれ、結審した。検察官側は、「刑事責任能力は完全にあった」と論告して懲役20年を求刑する一方、弁護人側は「犯行時、心神喪失状態だった」として無罪を弁論した。

この事件で、世間を驚かせたのは、弁護人側が申請して被告人を鑑定した精神科医ばかりではなく、検察官側が申請した鑑定医もまた、「殺害時は短期の精神病性障害で心神喪失だった」などと鑑定したことだ。良いか悪いかは別として、これまで有罪率99.9パーセントを維持し、精密司法を担ってきたといわれると検察庁・検察官の立場からすると、失態であるというほかない。

しかも、検察官側は、被告人の再鑑定を請求したが、東京地裁はこれを却下した。裁判所が、心神喪失を認め責任能力を否定すれば、被告人は無罪になるし、心神耗弱として制限された責任能力だけを認めると、刑が減軽されることになる。

ただ、一方で、城丸君事件、光市母子殺害事件、飲酒運転福岡市職員3幼児死亡事故事件等々を通じて、被害者感情を重視する世論の高まりもあり、裁判所がこれを尊重して判断する傾向も見られる。光市母子殺害事件にしても、山口地方裁判所、広島高等裁判所と、従来からの判例の立場を貫いて、一貫して無期懲役の判断をしていたにもかかわらず、最高裁判所は、死刑が相当であるかのように判断して、広島高裁判決を破棄している。

私は、鑑定について上記の状況だからといって、東京地裁が、被告人の責任能力を否定したりすることがほぼ間違いないと断定できるかというと、そうとは限らないと思っている。従来から、裁判所には、鑑定の結果は医学の判断であって、法的な判断は、必ずしもこれに束縛されないという考え方もある。東京地裁が、検察官の鑑定の再請求を却下したのは、これ以上、有罪判決を下すために障害となるような事情が出てくると、判断し難くなると考えたかもしれないからだ。

このようなことを考えることには、違和感があるかもしれない。しかし、裁判所が、自ら裁判所の役割を自負しているとすれば、十分にあり得ることだ。このことは、光市母子殺害事件について、最高裁が、ほとんど死刑以外の結論がないかのように述べながら、高裁判決を破棄するにとどめ、自判しないで、広島高裁に差し戻した理由を考えてみると納得できる。最高裁が自ら判断しなかったのは、世間には裁判ボイコットとまで見られた弁護団の行動があり、その評価はともかくとしても、もし自ら直ちに死刑判決をすれば、後世、そのような行動をした弁護団に対する裁判所としての制裁・報復と見られかねないと考えたからではあるまいか。差し戻すことによって、一定の審理を経過して結論を出した形を取ろうとしたように思えるのだ。

私自身、弁護士であっても、いずれの事件についても部外者であり、証拠を精査する立場にないので、法律家としての判断を述べることはできない。世間と同様、新聞、テレビなどマスコミの報道でモノを考えるほかない。しかし、以上述べたところは、床屋談義としては、十分にあり得ることと思う。如何でしょうか。

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