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コラム

離婚の実態
新しいスタートを切る方法


「何でなの。」、E子さんはふとため息をついた。「とても優しかった。」、「掃除、洗濯何でも手伝ってくれた。」……


男女間のトラブルは概して悲惨である。ほとんどの場合、心に決して癒(いや)すことのできない大きな傷痕を残す。
男女間の問題に限らず、トラブルの解決は多くの場合、金銭によってしか図りようがない(「金銭賠償」)。とは言っても、男女間の問題では、金銭による解決も、十分な満足を得られないことが少なくない。

E子さんの場合、相手のF夫は、まさに貧乏神であった。

看護婦であるE子さんは入院患者であったF夫と付き合い始め、恋に落ちた。
間もなくE子のアパートで一緒に暮らすようになり、1年後には籍を入れた。F夫はいつもそばにいてくれ、家事もほとんどやってくれた。E子は幸せであった。
しかし、F夫の家庭的なやさしさは、社会性がなく勤労意欲の無いことの裏返しに過ぎなかった。次第にわがままが現れ、まともに就職することもなかった。最初は就職面接に何度か行ってみたものの、口癖は、「誰も俺の実力を認めてくれない。世の中馬鹿ばかりだ。」であった。
結局、婚姻生活は2年ほどで完璧に破綻した。E子が夜勤明けに帰宅すると、F夫はお気にいりの衣服だけを持って消えていたのである。それまでの生活費はほとんどすべてE子の給料によるものだった。辛抱なE子がF夫と暮らし始める前にコツコツ貯めていた約1000万円の預金も、今は残高が105円になっていた。無理な借金はしなかったけれど、F夫の面接のためにと購入したスーツのクレジットの支払いは今も残ったままである。
E子の心の大きな傷と、経済的損失はいったい誰が贖ってくれるのだろうか。


もし貴女が、〝もうイヤ離婚したい!!〟と決心したとき、まず亭主と話し合いをするのが一般であろう。亭主が納得すれば、離婚届の用紙(婚姻届用紙はセピア色だが離婚届用紙は緑色で印刷されている。)に署名捺印して市町村役場等に届ければ良い(「協議離婚」)。

離婚のほぼ9割は協議離婚によるが、円満に(?)話がまとまるとは限らない。とても話し合いのできる状態ではない、どうにもこうにも話がまとまらないという場合の最終手段は、地方裁判所に離婚訴訟を起こし、裁判所の判決によって離婚することである(「裁判離婚」)。離婚のうち1%くらいが裁判離婚によっている。

ただし、家事審判法という法律によると、離婚訴訟を起こす前に必ず家庭裁判所に調停を申立てなければならないことになっている(「調停前置主義」)。ここで調停委員というおじさんとおばさんが間に入り話し合いが進められる。
一旦は愛情で結ばれた家庭に関することでもあり、今一度家庭裁判所で第三者を交えて話し合いを試みるという訳である。そして、ここで合意ができれば離婚したことになる(「調停離婚」。離婚の8%位はこれによる。なお、「審判離婚」というものもあるが、あまり活用されていない。)

さて、離婚訴訟で勝訴すれば、相手が泣こうが喚こうが、相手の了解がなくとも離婚できてしまうわけである。だから、それなりの理由(「離婚原因」)が必要である。民法は、①不貞行為、②悪意の遺棄、③3年以上の生死不明、④強度の精神病、そして、⑤その他婚姻を継続し難い重大理由を挙げている。

①について、ほとんど説明の必要はないかも知れない。、要するに、配偶者以外の異性と性的交渉を行うことであり、「姦通行為」とも呼ばれる。程度によっては“浮気”も含まれる。
ところで、相手の“浮気”を一旦許した後に、再度“浮気”を問題にして離婚請求をできるかどうかということが問題となることがある。要するに1回許しておきながら、蒸し返すのはいかがなものかという問題なのだが(「禁反言」)、このようなことが問題とされるのは、歴史的な背景があるようだ。
我が国は第二次世界大戦で敗戦し、男女の平等、個人の尊厳を定める新憲法が制定された。これに伴い、民法のうち、離婚に関する部分も含め「親族」や「相続」に関する部分が改正された。
戦前の旧民法では、「姦通」した事実だけで離婚原因とされるのは妻だけであった。夫は「姦通」したとしても「姦淫罪」という罪で処罰されないかぎりは離婚原因とはされないことになっていた。しかも、「姦淫罪」とは、当時刑法で定められていた犯罪であるが(現刑法では廃止されている。)、既婚女性が夫以外の男性と性交した場合、その夫が告訴することによって、その女性と相手の男性とが処罰されたのである。つまり、男性は“間男”として共犯的意味合いでのみ処罰されることはあるけれど、既婚男性が妻以外の女性と性交した場合であっても、その女性が独身であればそもそも処罰の対象にはならなかったのである。旦那さんが、お妾さんを何人囲っても問題がなかった。
そうすると、当然ながら、「姦通」を理由とする離婚請求は、夫が妻に対し行う場合がほとんどということになるであろう。
ただ、旧民法には、一方が相手を許した場合(「宥恕」といった。)には、もはや離婚請求はできないということを定めた規定があった(現民法にはない。)。姦通を理由とする離婚請求は、夫が妻に対し行う場合ばかりということになれば、この「宥恕」が夫の思い付きの横暴を抑制する機能を果たしていたとも考えられるのである。
つまり、既に述べたとおり、1度は許しておきながら、蒸し返すのはいかがなものか、ということのほか、このような旧民法に引きずられている面がある。
しかし、現在の民法では、離婚原因も男女平等であり、率直に、一方が相手を一旦は許したとしても、やはりそれが原因で夫婦の関係が壊れたしまったのかどうかを考えればよいことになる。「宥恕」を敢えて法律で定めておく必要もないし、現にそのような規定もない。

⑤は、たとえば、〝亭主が暴力をふるう〟とか、〝別居期間が長い〟とか様々な場合を含む。“その他”という意味合いもあるし、①ないし④のエッセンスを示した規定という意味もある。〝性格の不一致〟も程度が甚だしければこれにあたる場合がある。

別居期間の一応の目安は3年以上ともいわれているが、裁判官によって揺れがあり、決定的ではない。

なお、5年間の別居で画一的に離婚を認めるという法律改正が論議されている。
最近流行りの〝夫婦別姓〟とセットで検討されており、いずれも男女平等という理念からの検討だというのだが、〝5年間別居さえすれば離婚可能〟ということになれば、現実の経済的保障もないまま、とりあえずそれだけで放られることになってしまうことにもなりかねない。現在、法制審議会というところで検討中であり、今直ぐに改正されるという状況にはないようである。

簡単に説明すると以上のとおりであるが、当人の〝思いこみ〟では離婚できない。誰でも身びいきになりがちである。第三者であり公正かつ中立な裁判官の目からみても、円満な夫婦生活の継続・回復が期待できないという場合でなければイケない。


亭主が浮気の果て家を出て、不倫の相手と暮らし始めた。何年かが過ぎて、貴女に離婚を求めてきた。こんな場合、離婚請求は認められるのだろうか(この場合の亭主のことを「有責配偶者」という。)。

もちろん貴女は納得できない。従来は最高裁判所も、有責配偶者からの離婚の請求は認めない、という立場を堅持していた。例えば、昭和27年の最高裁判決は、このような夫の「請求が是認されるならば、」、妻は「踏んだり蹴ったりである。」として、夫の請求を斥けた(“踏んだり蹴ったり判決”と呼ばれている。)。
が、この考えも次第に緩和されている。昭和62年9月2日、最高裁判所は、①相当長期間の別居、②未成熟子がいないこと、③妻が離婚により苛酷な状態におかれる等特段の事情がないこと、の3つを要件を満たす場合に有責配偶者からの離婚訴訟を認めることとした(ちなみにこの裁判は、中学校の教科書にも紹介されているようである。)。
その後、有責配偶者からの離婚の請求が認められる別居期間は次第に短くなった。例外的に8年弱のものもあるが、おおむね10年以上が目安のようである(ただし、②、③の要件も当然備えていなければならない)。


さて、離婚することなれば、やはり先立つものはお金である。「財産分与」「慰謝料(慰藉料)」「養育費」という言葉を良く耳にすると思う。

簡単に言えば、「財産分与」は、夫婦の協力で残したが一方の名義になっている財産について、協力の度合い・貢献度と将来の生活資金という観点から分配する〝精算金〟(お金とは限らない。家とか土地などもある)であり、「慰謝料」は、結婚生活中に相手から受けた苦痛(「精神的苦痛」)を償ってもらう〝賠償金〟であり、「養育費」は、子供を引き取り育てるために相手から受ける〝仕送り〟である。このうち財産分与と慰謝料を「離婚給付金」という。なお、慰謝料は3年以内、財産分与は2年以内に請求しないと時効となってしまうので、注意しなければならない。

もっとも、「離婚給付金」をいくらにするかということは法律に定められてはいない。もちろん、財産がなければ「財産分与」を受けることはできないし、慰謝料は相手に責任がある場合にその程度に応じてしか取れない。
では、「世間相場は?」、「私の場合は?」と尋ねられても、千差万別な夫婦の生々しい状況を反映するだけに、一概には答えられない。
実例では、夫名義の財産について、妻が受けることのできる財産分与はおおむね20%から50%の間で決まるのが通常らしい。専業主婦の場合は20%から 30%が一般的のようであり、共働きの場合は50%となることも多いといわれている(共働きはフィフティー・フィフティー、相手方名義の財産だけでなく、当方名義の財産も分与の対象になるからである。)。慰謝料は、相手にダメージを与えた行動そのものだけでなく、婚姻期間・夫婦の年齢その他一切の事情が考慮される、といわれてはいる。

より具体的な数字については、最高裁判所の「司法統計年報」という本を見ると、ある程度のことは分かる。平成4年分の統計によると、その年、家庭裁判所で何らかの結論が出た離婚に関する事件の総数は4万6790件であり、そこで調停離婚などにより離婚と決まったのは1万6791件ある。
そのうち、離婚給付金の支払の取り決め(約束)ができたのは9489件であり、その平均額は432万円とのことである。
この統計によると、「離婚給付金」は、おおむね結婚期間(正式には「婚姻期間」)が長くなればなるほど多くなっているが、平均額で500万円を超えるのは結婚期間13年以上の場合である。5年未満の離婚が3分の1以上を占めるが、平均額を見ると、1年以上2年未満が161万円、4年以上5年未満が286 万円である。
なお、夫が支払うのが8615件で圧倒的に多いが、妻が支払うことになったものも874件ある。

ただし、これらの数字は、一応の参考にはなるけれど、離婚の実態をすべて表してはいない。厚生省が発行する「人口動態年間統計」によれば、同じ平成4年の離婚件数は17万9191件であり、実に2分56秒に1組が離婚している。そして、正式には離婚していないが現実に家庭崩壊し別居している夫婦はもっともっといるはずである。つまり、今述べた金額は、一応は円満に決まった例にすぎず(裁判離婚は含まれていない。)、正式に離婚した場合のわずか19分の1の統計である。また、財産分与と慰謝料とを区別しないままの金額の統計であり、どんな事情をどの程度見積もっているかは皆目分からない。
しかも、調停が成立した時点で約束した金額にすぎず、分割、後払いの場合もあるから、追跡調査をしている訳ではなく、その後、実際に約束どおり支払われたのかどうかは分からない。

いずれにしても、実際にどれだけお金を取れるかということは、当方の希望よりも相手のふところ具合(「資力」)によって決まってしまう。仮に権利があったとしても、サラ金から借りまくったうえ女性と逃げてしまった元亭主に、100万円単位の支払を求めるのは決して現実的とはいえない(「絵に描いた餅」)。

そもそも、突然離婚を求められ、あるいはどうしようもなくなって離婚を決意する側としては、統計上の数字が一応世相を反映しているとしても、決して満足できる金額ではないのではなかろうか。テレビ、週刊誌に登場する有名タレントの場合のようにはいかない、のである。


離婚は、『法律問題』の中でも、特に精神的な疲労と消耗の度合いが著しいにも関わらず、金銭的満足度は極めて低い領域にあるという気がする。
『法律』の専門家は、よく離婚給付金の金額について抽象的な決定基準の善し悪しを問題とする。しかし、いくら理屈の世界で立派な基準を作りあげたところで、結局のところ、相手に責任があっても金がなければ取りようがないことが多い、というのが実情である。
その意味で『法律問題』のうち、とりわけ離婚問題については、“現実を見据え、貧乏神を自分の世界から追い払う”こと、そして、“過去に不幸であった自分とは縁を切って新たなスタートを切るか”、ということを積極的・意識的に考えていくことが重要であろう(“自分の自分に対する責任”)。

なお、おそらく私の考え方に近い立場で活動している池内ひろ美さんという人がいる(「東京家族ラボ」を主宰)。私が月1回ペースで出演させていただいているTV番組でご一緒したが、卓見の持ち主である。「リストラ離婚」等著書も多い。ホームページも開設しており、大変参考になる(離婚の学校 東京家族ラボ)。

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