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コラム

7 “定期借地権”を素材に


次に、ある目的を達成するため、法律的手段・技術等を考案する場面を見てみよう(「プランニング」)。

プランニングなどというと、M&Aとか、社債の発行、債権や不動産の証券化・流動化といった日経新聞一面に載るような大規模なケースを想起しがちである。実際、このようなケースでは、税法のほか、為替管理関係の諸法令や独占禁止法、証券取引法、社会法、労働法などの多数の法分野に関し、考案すべき法律事項が、広範・多岐・複雑とならざるを得ない。

しかし、実はプランニングの必要は、大規模なケースに限られる訳ではない。ある目的のための仕組み(スキーム)を作り上げ運営するうえ、法律に規制される以上、多かれ少なかれ、目的に合った法律的手段や法技術の選択を無視することは出来ない。
これを怠ると、予想外のトラブルが発生したり、もっと端的にいえば、大損をしかねない。
ここでは、プランニングのイメージを感じ取ってもらうため、比較的知られている制度を例に、超単純化して説明することとする。

建物の賃貸借を「借家(しゃっか)」といい、建物を所有するための土地の賃貸借を「借地(しゃくち)」という。このような賃貸借については、「借地借家法」という『法律』がある。もともと「建物保護に関する法律」、「借地法」、「借家法」という3つの『法律』があったが、平成3年に1つの『法律』にまとめられ、平成4年8月1日から適用されるようになった。“借地借家法改正”と呼ばれ、改正準備の過程では“一度貸せばやったも同然”という意識の強かった地主・大家は、自分に有利になると思い、ずいぶんと“バラ色の”期待を持ったものだ。
しかし、現実に「借地借家法」が出来てみると、地主・大家の立場から見る限り、改正前の賃貸借には古い方の『法律』が適用されるし、その他の内容も、思ったほど期待に応えたものとはなっていない。
期限が来ても、「法定更新」という制度があり、かなり厳しい特段の事由(「正当事由」)がないと、自動更新してしまうことになる(「強行法規」)。
要するに、少なくとも法律上は、貸す側の立場では、貸す側が主導的に借地・借家関係を解消できるのは、賃料の長期滞納その他借りる側の明らかな背信行為がある場合に限られるので、場合によっては貸しっぱなしとなることを覚悟で、相応の対価を確実に確保することを考えることが、最重要事項となる。

もっとも、「借地借家法」で始めて創設された新制度として、「定期借地権」が注目されている。簡単に言えば、土地を貸しても期限が来たら必ず返されるというものである(ただし、そうするためには、事前に整備しなければならない要件があるので注意されたい。)。
「定期借地権」には、一般定期借地権(50年以上)、建物譲渡特約付借地権(30年以上)、事業用借地権(10年以上20年以下)がある。
期間が比較的長いので、地主としては不満が残るであろう。また、当初、定期借地権を使えば、土地を購入しなくても良いので、安く自分の家が持てるとの宣伝もあったが、自分の持ち家であっても、期限が来れば出て行かなければならず、自分の“死”とか、“寿命”とかいう、大抵の人が一番考えたくないことを予定しながら、家を建てなければならない訳だから、今の日本では、“ビジネス”として、大きな“市場(マーケット)”を獲得することはできないような気がする。

しかし、地主と借主双方が経営者という立場に経ち、“ビジネス”という観点から見ると、それぞれの立場に立ち、利益を確保する仕組みを考えることもできる。相手方がどのような利益を確保できるか、その利益をどのように相手に示すかは、“交渉”を有利に進めるうえで重要な要素だ(「ギブ・アンド・テイク」)。
例えば、現実的な「定期借地権」の利用として考えられるのは、“多店舗展開”をはかる企業のいわゆる「郊外店」店舗の建設であろう。
現在、自家用車を使ってフラリと出向き、駐車のための待ち時間もなく買い物ができる「郊外店」は大流行(おおはやり)である。しかし、「郊外店」を開設するためには、まず店舗用地を求めなければならない。そして、地主としては、企業が、いい場所に土地を借りようとしても、これまでの「借地法」によれば(ただし、現在の「借地借家法」でも、通常の借地権であればほぼ同様である。)、“一度貸せばやったも同然”と不安となる。
しかし、今のところ利用する予定のない土地(「遊休土地」)を所有する地主としては、自分の代は地代収入を得て優雅に暮すことができるし、可愛(かわ)い孫・子の代に必ず土地を返して貰えるのであれば、一挙両得で大変都合がよい。そして、節税効果があれば言うことはない。
他方、企業としても、10年も経てば、店舗周辺の街並みも変容し、立地条件、市場、市況も変わる(「経営サイクル」)。10年後(あるいは、もっと早い見通しがつけばその時期に)、なお商売を継続したいのであれば、再度地主と協議すれば良いし、もし当てがはずれていれば10年後に撤退すれば良い。立地条件が良ければ10年もあれば、十分に収益をあげることができているから、地主が契約の継続を望まなかったとしても、諦めがつく。このような考えにたてば、地主・企業双方にとって、10年の期限を定めることのできる事業用借地権は魅力的である。

以上ひとつの試論(=思いつき)ではあるが、このように、『法律』の存在を前提にプランニングをしてみることは、まさに『法律問題』の戦略的な処理の一場面である(「法工学」)。トラブルを解決することばかりではなく、トラブルを回避すること、そしてさらに、『法律』を有効かつ計画的に利用することを考えていく必要がある。
きっと新たな“ビジネスチャンス”が生まれてくることだろう。

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