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コラム

譲り受けた店の債務発覚
知らされなかった債務、引き継ぐつもりのなかった債務でも、
引き継がなければならなくなってしまう場合がある!!

出典:毎日新聞 平成11年7月30日朝刊
『La Femme~ラ・ファム~』連載

私は先月、友人が営んでいた花屋さんを譲り受け、自分の店をオープンしました。友人のA子が営んでいた花屋さんを譲り受けたのです。店舗は大屋さんにそのまま借り、什器(ジュウキ)、備品類もそっくり買い受け、お得意さんも引き継ぎました。

ところが、開店後まもなく、友人と取引していたという生花の卸元が現れ、「未払い代金がある」と言って、支払を求めてきたのです。

このような場合、私が未払い代金を支払わなければならないのでしょうか。
(生花店経営、36歳)

あなたが友人の未払い代金があることを知らなかった場合でも、支払わなければならない場合があります。
店を譲り受けた形態は、商法でいう「営業譲渡」にあたると思われます。「営業譲渡」は、ここでは、とりあえず、営業に関して個々的に物を譲り受けるのではなく、一体としての商売全体を買い取ることと理解して下さい。

「営業譲渡」といっても、借金などを引き継ぐかどうかは、譲渡人と譲受人とが決めることであるのが原則のはずです。
しかし、譲り受けた人が、商号(企業としての名称や屋号)を引き続き使用するような場合(商号の続用)には、所定の手続をしておかないと、譲渡人と譲受人の取り決めとは無関係に、借金、買掛金など従来の債務も引き継ぐことになる場合があります(商法26条)。
また、商号を引き継がない場合であっても、例えば、譲り受けた際の挨拶状の書き方によっては、同じく債務を引き継がなければならないことととなってしまうこともあります(商法28条:債務引受広告)。
「商号の続用」とは全く同一の商号に限らないとされていますし、どのような場合に営業譲渡にあたるかは専門的です。また、挨拶状などの文面をどのようにすればよいのかということも素人には意外と思われるほどに微妙です。

現に、最近の裁判で、挨拶状の文面の法的評価が、地方裁判所(地裁)とその控訴審の高等裁判所(高裁)では判断が分かれた事例もあります。裁判所間でさえ判断が分かれるということは、よほど注意して挨拶状を出さなければいけない、ということを物語るものといえるでしょう。 この事件の挨拶状の文面を関連情報として下記に掲載しておきますのでご一読下さい。

さて、「私の知らないことなのになぜ?」と文句のひとつも言いたくなるところですが、法律は、知らない間に経営者が変わってしまうことにより損をしかねない債権者の立場にも配慮したうえで定められているということなのです。

ビジネスには、自分の立場だけからすると、一見常識に反するようにも思える意外な法律問題が潜んでいることがありますので、ご注意下さい。

企業の法律問題 


関連情報

◎ 地方裁判所と高等裁判所で挨拶状に関する判断が分かれた事案(「債務引受広告」)

 ・東京地裁(平成9年7月30日判決)  :商法28条の適用を肯定→譲受人は債務を引き継ぐ
 ・東京高裁(平成10年11年26日判決):商法28条の適用を否定→譲受人は債務を引き継がない

大事なのは、上級の高裁の判断内容ではありません。一つの特定の事件の解決としては、地裁の判断より上級の高裁の判決が優先されますが、未来永劫、類似の事件でもその高裁の判断が正しいとされるとは限らないからです。別の裁判では、逆の結果になるかもしれません。
重要なことは、地裁と高裁とで判断が分かれたということです。判断が分かれること自体が、挨拶状の中にあいまいさがあったことを示すものであり、とんでもない危険性が含まれていた、ということを確認しておく必要があります。つまり、次に紹介する「挨拶文」は、決してマネしてはいけない例として参考にしなければなりません(反面教師)。

●挨拶文の内容

謹啓 時下益々ご清栄の事とお慶び申し上げます。
平素は格別のご高配を賜り有難く厚く御礼申し上げます。
さて、株式会社大英管工事として十七年間お引立てをいただいておりましたが、この度、建設機材の大手メーカーであります日綜産業株式会社との提携により設備配管部門を独立させ、日綜大英ステンレス配管株式会社を設立する運びとなりました。
これを機に、増加いたしますステンレス配管に一層特化し、より高品質・低価格の工事を提供させていただく所存でございます。 新会社の社屋・設備・スタッフは株式会社大英管工事より引き継いで運営いたします。
ここに、株式会社大英管工事に賜りました長年のお引立てご愛顧を心より感謝申し上げますと共に、日綜大英ステンレス配管株式会社に倍旧のご支援お引立てを賜りますようお願い申し上げます。
まずは略儀ながら書中を持ってご挨拶申し上げます。
                                                                   敬具

◎関連条文

第26条〔商号続用の場合-譲受人の責任〕
営業の譲受人が譲渡人の商号を続用する場合に於ては譲渡人の営業に因りて生じたる債務に付ては譲受人も亦其の弁済の責に任ず
(2)前項の規定は営業の譲渡後遅滞なく譲受人が譲渡人の債務に付責に任ぜざる旨を登記したる場合には之を適用せず営業の譲渡後遅滞なく譲渡人及譲受人より第三者に対し其の旨の通知を為したる場合に於て其の通知を受けたる第三者に付亦同じ

第27条〔商号続用の場合-譲受人に対する弁済〕
前条第一項の場合に於て譲渡人の営業に因りて生じたる債権に付譲受人に為したる弁済は弁済者が善意にして且重大なる過失なかりしときに限り其の効力を有す

第28条〔商号を続用せざる場合-譲受人の責任〕
営業ノ譲受人ガ譲渡人ノ商号ヲ続用セザル場合ニ於テモ譲渡人ノ営業ニ因リテ生ジタル債務ヲ引受クル旨ヲ広告シタルトキハ債権者ハ其ノ譲受人ニ対シテ弁済ノ請求ヲ為スコトヲ得

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