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コラム

札幌高等裁判所の注目裁判例を2つ


1 過払い訴訟

グレーゾーン金利:利息、架空請求と認定--札幌高裁、初の判断
(2007.04.28 北海道朝刊)

利息制限法を上回る消費者金融業者の「グレーゾーン金利」利息請求を巡り、石狩市の女性が大手消費者金融「CFJ」(本社・東京都品川区)を相手取り、過払い金など約360万円の返還などを求めた民事訴訟の控訴審判決が26日、札幌高裁であった。伊藤紘基裁判長は「グレーゾーン金利による請求は不法な架空請求に当たる」とする全国初の判決を出し、同社に過払い分約280万円や慰謝料など計約330万円の支払いを命じた。

訴えによると、女性は87年6月~05年9月の間、同社から借金した。女性側は昨年2月、「CFJ側は支払い義務がないことを告げずに利息を受け取り、不法行為が成立する」として札幌地裁に提訴。同社側は、グレーゾーン金利の根拠として出資法が定める上限金利(29・2%)を挙げ、「グレーゾーン金利は監督官庁も容認していた」と反論していた。1審は同社に約280万円の支払いを命じ、双方が控訴していた。

グレーゾーン金利の利息について、伊藤裁判長は「(双方の合意などの)要件を備えた場合にのみ受領できるが、CFJ側は要件を満たしたかについて立証していない」として不当請求と認定。「元本がなくなった後は、存在しない債務にかかる利息なので、架空請求として不法行為を構成する」と述べた。

原告代理人の宮原一東弁護士は「架空請求と判断され、多重債務者の苦しみが裁判所に理解してもらえたことに大きな意義がある」とコメントしている。【真野森作】

2 ヤミ金訴訟

違法融資訴訟:高金利の貸金業者に「元本、保護に値せず」--札幌高裁判決
(2005.02.24 毎日新聞北海道朝刊) 

出資法の上限金利(年利29・2%)を大幅に超える年利1200%で融資していた札幌市中央区の貸金業者に対し、札幌高裁が23日、借り手側の原告男性に元本や利子約109万円全額を支払うよう命じた判決で、末永進裁判長は「業者側の融資や回収は出資法の罰則に該当する明らかな違法行為。男性の支払った全額は不法行為に基づく損害といえ、業者が男性に融資した元本は保護に値しない」と指摘した。

全国ヤミ金融対策会議によると、高裁段階で元本を含めた全額の支払いを業者に命じたのは初めてとみられる。【遠藤拓】

◇実務追認の判決--全国ヤミ金融対策会議代表幹事の宇都宮健児弁護士の話

ヤミ金の根絶や被害者救済につながる、意味のある判決だ。対策会議の弁護士や司法書士はヤミ金に利益を与えないとの前提で訴訟や交渉に当たっており、司法判断が実務を追認した。

主 文

1 原判決を次のとおり変更する。
(1)被控訴人は、控訴人に対し、108万9000円及びこれに対する平成15年3月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 被控訴人の請求をいずれも棄却する。

2 訴訟費用は第1、2審とも被控訴人の負担とする。

3 この判決第1項(1)及び第2項は、仮に執行することができる。

事実及び理由

第1 控訴の趣旨
主文と同旨

第2 事案の概要
1 本件は、被控訴人から多数回にわたり金員を借り入れ、その返済をしてきた控訴人が、被控訴人に対し、被控訴人は、貸金業の規制等に関する法律に定める貸金業者であるにもかかわらず、控訴人との取引において所定の契約書面や領収証等の交付をしなかったばかりか、年利1200パーセントにも及ぶ著しく高率の利息を受領するなどしたとして、不法行為又は不当利得に基づいて、控訴人が被控訴人に支払った金員の総額108万9000円全額についての損害賠償又は不当利得返還及び同金員に対する訴状送達の日の翌日である平成15年3月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め(原審の第455号事件)、他方、被控訴人が、控訴人に対し、4回分の貸金合計28万1000円の返済並びに各貸付日から支払済みまでの年29.2パーセントの割合による約定利息及び遅延損害金の支払を求めた(原審の1053号事件)ものであるが、原判決は、被控訴人の請求については、これをいずれも棄却し、控訴人の請求については、一部を認容して、その余を棄却したところ、控訴人がこれを不服として、前記控訴の趣旨記載のとおりの裁判を求めて控訴したものである。

2 当事者の主張
(控訴人の主張)
(1)控訴人は、平成14年3月14日から平成15年1月31日までの間に、原判決書別紙取引経過目録1記載のとおり、15回にわたり合計58万5000円を被控訴人から借り入れ、上記期間中に、被控訴人に対し、10回にわたり合計108万9000円を支払った。
(2)被控訴人は、貸金業の規制等に関する法律(以下「貸金業法」という。)に定める登録貸金業者である(北海道知事(1)石第○○○号)にもかかわらず、控訴人との上記取引において所定の契約書面や領収証等の交付をしなかったばかりか、控訴人から受領した金員の額は、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(以下「出資法」という。)5条所定の利率を大幅に上回る超高金利の金員であって、同法において刑罰の対象とされるものであった。
(3)被控訴人による上記貸付けは、それを呼び水にして控訴人から法外の超高金利による多額の金員を受領することを目的とするものであって、金銭消費貸借契約に名を借りた悪質な犯罪行為であり、不法行為にあたる。そして、控訴人は、金銭消費貸借契約に名を借りた悪質な犯罪行為により、被控訴人に対し、合計108万9000円の金員を支払わされ、同額の損害を被った。
なお、控訴人は、被控訴人から貸金名下に合計58万5000円を受領したが、それを損害額から控除することは、法は不法な原因に基づく財産変動の回復について助力しないという民法708条の趣旨に照らし相当ではない。
(4)仮に、被控訴人の控訴人に対する貸付及び返済金の受領が不法行為に該当しないとしても、上記の事情に照らせば、本件における被控訴人の受領金員は、そのすべてが貸金業法42条の2や出資法に違反する無効な契約に基づくものであるから不当利得にあたり、被控訴人は悪意の不当利得者である。
また、控訴人が、被控訴人から受領した58万5000円の金員については、民法708条の趣旨に照らし、これを控訴人の被った損失から控除すべきではない。
(5)よって、控訴人は、被控訴人に対し、不法行為又は不当利得に基づいて、控訴人が被控訴人に支払った金員の総額108万9000円全額についての損害賠償又は不当利得返還及び同金員に対する訴状送達の日の翌日である平成15年3月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(被控訴人の主張)
(1)被控訴人が、貸金業法に定める登録貸金業者であることは認めるが、控訴人との取引内容については、原判決書別紙取引経過目録2記載のとおりであって、貸付金額及び返済受領金額ともに控訴人の主張は事実と異なっている。
(2)また、被控訴人は、貸金業法に則った営業をしていたし、控訴人に対する、いずれの貸金についても年29.2パーセントの利息及び損害金の約定を付したにすぎず、控訴人主張にかかる法外な金利を付したり、法外な金利による金員を受領したことはない。
(3)したがって、控訴人の本件請求は、前提事実を欠いており、理由がない。
なお、本件において、被控訴人が控訴人に対して金銭消費貸借契約に基づいて交付した金員が不法原因給付となる旨の控訴人の主張は争う。

第3 判断
1 被控訴人が、北海道知事の登録を受けた貸金業法上の貸金業者であることは当事者間に争いがない。

2 甲第2号証、第15号証、第30号証、原審における控訴人、被控訴人代表者(後記措信しない部分を除く。)及び各項掲記の証拠並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。
(1)控訴人は、平成14年当時、札幌市内の病院に看護師(乙3)として勤務していたが、複数の金融業者から高利の借入れを重ね、その返済に窮していたところ、同年3月ころ、電信柱の広告で被控訴人を知り、同月14日、被控訴人事務所において、金員の借入れを申し込んだ。
被控訴人は、控訴人の身上・勤務先等について控訴人から聴取した上で(乙3)、同日、控訴人に対し2万5000円を交付したが、その際、返済期限は控訴人の給料支給日の同月25日とし、返済金額を5万円と定め、返済方法は持参払とし、また、返済予定日の前日には、控訴人から被控訴人に対し電話で連絡すべきこと要求した。
(2)控訴人は、平成14年3月25日、被控訴人に対し、上記約定返済金5万円を支払ったほか、以後、原判決書別紙取引経過目録1記載のとおり、被控訴人から金員を借り入れ、その返済を繰り返した。

3 上記2で認定した事実については、そのほとんどが控訴人の記憶に基づくもので、控訴人の記憶を客観的に裏付ける契約書、領収証等の証拠資料を欠くものである。これに対し、被控訴人の主張に沿う書証として、被控訴人提出の控訴人についての貸金台帳(乙2)
のみならず、控訴人作成部分について成立に争いのない乙第1号証の1ないし4があるところ、これらの乙号証については、その信用
性を認めることができないし、上記貸金台帳の記載に沿った被控訴人代表者の供述もまた信用することができない。
すなわち、被控訴人は、貸金業者として、貸金業法所定の手続を遵守していたとか法外の金利を約定・徴求したことはない旨主張するにもかかわらず、当審における証人Aの証言によれば、被控訴人は、Aに対し、返済期を1か月後とし、返済金額を現実の貸付金額の2倍と定めて金員を貸し渡し、その返済を受けたことが認められ(同証人については、本件の控訴人と被控訴人間の争訟において虚偽を陳述すべき特別の事情は見当たらない。)、また、当審における証人Bの証言によれば、Bが先に控訴人代理人に提出した陳述書(甲32の1、33)の内容は、控訴人代理人の示唆や指図に基づくものではなかったことが認められるところ、同陳述書によれば、Bもまた平成15年10月から平成16年3月ころまでにかけて7回程度被控訴人から借り入れ、返済期間についてばらつきはあるものの、現実に借り入れた金員に対し概ね1か月にほぼ倍額の率に該当する金員を返済していたことが認められる。そして、これらの事実と別事件(札幌地方裁判所平成16年(ワ)第1086号)におけるCの本人尋問における供述(甲37)は、少なくとも、被控訴人が金員の貸付及び貸金の回収に当たって29.2パーセントの利率を全く遵守していなかったということ及び被控訴人が借主に契約書や領収証を交付することを遵守していなかったし、貸金の回収に当たって、銀行振込等の客観的痕跡を留めない持参払の方法によっていたことなどの点において共通する事実が認められる。してみると、当審において出頭することなく証言を得ることのできなかったDの控訴人と同旨の陳述内容が記載された供述録取(甲12)についても、その信用性を認めることができるというべきである。
また、本件に顕れた証拠を総合すると、被控訴人の営む貸金業は、数万円程度の小口の貸金が大半を占めることが認められるところ、
被控訴人は短期間における貸金では利益が上がらないものの、窮状にある借主に対するボランティアとして、法定の金利を遵守してきた旨主張し、また、そうした主張に沿う供述をするのであるが、控訴人本人尋問の結果及びその他前記別事件におけるCの本人尋問での供述等から認められる平穏さを欠いた取立行為、借主に対する制裁金を伴った事前連絡要請及び借主からの預金通帳等の徴求・管理等に照らすと、被控訴人の取立ては熾烈であり、これと相反する被控訴人の上記主張や供述はいずれも到底信用することができない。
したがって、その大半を記憶に依拠した控訴人の本件請求については、他の例における被控訴人の貸付状況に照らし、本件における貸付の大要に関し十分に信用することができ、また、控訴人の預金口座の入出金状況(甲15)や被控訴人提出の証拠を参考にして記憶を喚起した上で整理した個々の貸借及び返済についての控訴人の陳述(甲30)の信用性を首肯することができる。
なお、被控訴人が提出した乙第2号証は、その記載内容を裏付ける客観的資料の裏付けがなく、貸金業者としての帳簿(貸金業法19条)としてのみならず通常の商業帳簿としても、その正確性について信用性に乏しく、同号証のみをもって、上記認定を左右するには足りないといわざるを得ない。また、乙第1号証の1ないし4については、それらが一度も控訴人に交付されていないことに照らすと、その記載内容の正確性をにわかに信用することはできない。そして、他に上記控訴人やCらの供述の信用性を覆すに足りる証拠は見当たらない。

4 以上によれば、被控訴人は、原判決書別紙取引経過目録1記載のとおり、控訴人との間で金員の授受をしていたことが認められるところ、それは、貸金業法や出資法を全く無視する態様の行為であり、まさに無法な貸付と回収であって、貸金業者として到底許されない違法行為であるというべきである。
法は、ある程度の高利による消費者金融を許容してはいるが、本件のように出資法の罰則に明らかに該当する行為については、もはや、金銭消費貸借契約という法律構成をすること自体が相当ではなく、被控訴人が支出した貸金についても、それは貸金に名を借りた違法行為の手段にすぎず、民法上の保護に値する財産的価値の移転があったと評価することは相当ではない。
したがって、本件において、控訴人が被控訴人に支払った108万9000円はその全額が被控訴人の不法行為に基づく損害であるといい得るとともに、被控訴人から控訴人に交付された金員については、実体法上保護に値しないのみならず、訴訟法上の観点から見ても、被控訴人に利益になるように評価することが許されないものというべきである。このことは、たとえば、通常の取引における債権者の不注意に基づく過失相殺の主張が許されても、当該取引が債務者の詐欺や強迫による場合には、当の欺罔行為者又は強迫行為者である債務者からの過失相殺の主張を許さないものとすることと同様に、法の実現の場面における各行為や主張の評価として民法及び民事訴訟法の前提となっているものと解することができる(民法1条、91条、民事訴訟法2条)。

5 以上の次第であるから、控訴人の本件請求のうち、被控訴人の不法行為に基づく主張は理由があり、したがって、その余について判断するまでもなく、本件請求を全部認容すべきところ、その一部を棄却した原判決は不当である。

第4 結論
よって、本件控訴は理由があるから、原審第455号事件にかかる原判決部分を変更することとして、主文のとおり判決する。
札幌高等裁判所第2民事部
裁判長裁判官 末永 進
裁判官 森 邦明
裁判官 杉浦 徳宏

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