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メモ

上申書(h24.7.18)

2012年9月 8日 14:57

平成23年(ワ)第1753号 和解金等請求事件
原  告  A
被  告    有限会社X

上    申    書

                                                        平成24年7月18日

札幌地方裁判所 民事5部1係 御中

                         原告訴訟代理人弁護士  前  田  尚  一

 

 第9回口頭弁論調書には,原告の陳述として,《当方の主張が裁判所にご理解いただけない場合は,請求を棄却されてもやむを得ない。》と記載されている。
 しかしながら,当原告訴訟代理人が述べたのは,平成24年4月23日付け訴えの変更の申立書の「第2 請求原因の変更」で金銭請求として増額された分についてである。しかるに,上記記載は,原告の主張全般に及ぶ陳述であったかのように表現されたものであって,弁論の要領等として記載されるには明らかに不正確で不適切な表現である(もっとも,同年6月7日付け上申書で示唆したとおり,客観的に裁判所に理解できない主張に法的効果が付与されないことは当たり前のことである。限定的であってもそうでなくても,口頭弁論調書において弁論の要領等として記載としておよそ意味のないものであることには変わりないところではある。)。

 上記のように法的な意味がない事項が口頭弁論調書中に記載されるに至った経緯について,当原告訴訟代理人の認識を示すと,次のとおりである(原告訴訟代理人としては,できる限り主観的にならないように自制しながら,控え目に記述したつもりである。)。
 すなわち,担当裁判官が,上記増額分について,なぜ和解の法的効果として金銭請求ができるのかが理解できないと釈明を求めたので,当原告訴訟代理人としては,本件和解契約の合意内容を合理的に解釈するにあたり,民法414条,722条1項の趣旨を考慮すべきである理由を説明をしたつもりであった。
 しかし,原告準備書面中にはこれを根拠づける説明が全く見当たらないとか,書いてあるということであればどこに書いてあるのか明らかにせよとのことであった。
 そこで,当原告訴訟代理人は,同年6月6日付け原告準備書面の第2の4,特に7頁11行目以下の記載を示したが,担当裁判官は,和解は合意があれば何でもありというものであって,和解の効果は合意に基づくものであり,債務不履行責任又は不法行為責任ではないのだから,民法414条,722条1項を持ちだすこと自体がそもそもおかしいと断言された。
 そのため,当原告訴訟代理人としては,これ以上に説明することを断念し,理解していただけないのであればやむを得ない旨発言したところ,担当裁判官がいきなり,これを調書に記載するよう書記官に指示したものである。

  ところで,和解の効力を認定的効力,付与的・創設的効力といった概念を用いてする古典的な議論の是非はともかく,和解によって確定された法律関係も,その確定効に反しない限り従前の法律関係との同一性が否定されるわけではなく,当事者の和解契約の内容を合理的に解釈するに当たって,従前の法律関係に適用される法条やその趣旨を考慮することそれ自体は何もおかしなことではないということは異論がないと考えられる(大判昭和7・9・30民集11巻1868頁参照)(我妻栄『債権各論中巻二』[1335],星野英一『民法概論Ⅳ』339頁以下・342頁以下,鈴木祿彌(編)『新版注釈民法(17)』259頁以下)。
 そして,このことは,法解釈の領域の問題であって,当該事案で当事者の意思を合理的に解釈するにあたり,従前の法律関係に適用される法条やその趣旨をどの程度考慮して事実認定をするかは,担当裁判官の自由心証に委ねられているということとは別論である。原告訴訟代理人としては,原告の採る法的観点,すなわち,上記の基礎的な法理を前提とした法律構成を説明したつもりであったが,担当裁判官には,ご理解いただけなかったようである。
 
 以上のとおり,口頭弁論調書中に原告の陳述として不正確で不適切な記載がされていることに加え,平成23年9月28日の弁論期日で,担当裁判官に同月26日付け原告準備書面の「第3 請求の追加」に関して釈明を求められたところ,「積極的債権侵害」という用語を用いて釈明したものの,担当裁判官には,本件の事実関係において「債権」侵害などという法律構成はあり得ないと断じられ,ご理解いただけなかったため(「積極的債権侵害」という用語をご存じなかったのか,第三者による債権侵害という場合の「債権侵害」を想定されていたようである。),同年10月28日付け原告準備書面で,基本概念の教科書的な説明部分に割いて(2(1)ア(4頁))提出したところ,ようやく当職のいわんとするところを理解していただいたことを思い起こし,上申する次第である。

 なお,以上では,異論のない基礎理論に触れたにすぎず,争いがある法的論点に独自の解釈論を展開するものでないことはもとより,そもそも本来的に裁判所の職責である法規の発見・解釈・適用の範疇に属する事項に言及したものであって,新たに事実そのもの主張を述べるものではなく,弁論の再開を求めるものではない。

 以上