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0003【あの島田紳助氏が,あのタイミングで出版社を提訴した真意は?】〇

2015年12月18日 15:30


 こんにちは。弁護士の前田尚一です。
 もし,法律問題の心配,悩みをお持ちでしたら,このメールをご返信くださ
い。


 さて,今回のテーマは,


                      《訴訟を戦略的に利用する!》

 次のお話は,島田紳助さんが,あの事件が報道された後,引退したり,名誉毀損裁判を提
起したばかりのころに公表したものです。

 しかし,今考えても,次のようなページを,やや深読みすると,当時のその
ような対処は,よい方向へ向かうために,引退は最善の選択でしたし,名誉毀
損裁判の提起は有効な手段であったと思います。



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―― 島田紳助さんが,例の事件後しばらくして,名誉毀損で出版社を提訴し
  ました。
   いよいよ追い込まれたということですか。


前田  そうは思えません。

   芸能界への復帰作戦のことを考えると,現在の状況では絶妙のタイミン
  グで訴訟提起したと思います。


―― どうしてですか。


前田 不祥事報道をされた場合,特に大手の場合,灰色と言われながらも人々
  は黒に近い印象を抱きます。まさに有罪の推定です。

   10年ほど前,ある市議会議員の依頼で,新聞社に対する名誉毀損事件
  を担当しました。

   詳細は,私の事務所のHPをご覧頂ければと思いますが,新聞に業者と
  の癒着に関する記事が掲載された事案です。

     ⇒ http://bit.ly/TpEWfl
 
   この議員は,市民の集まりの場で,

       「○○新聞が間違うはずがない。」
       「潔白だというのなら証明しろ。」
  
  と詰め寄られたそうです。

   しかし,本来は事実があったという側に立証責任があるのが通例。
   実際にあった事実を証明することに比べ,事実がなかったことを証明す
  ることは,「悪魔の証明」と言われるほどとても難しいことです。


―― 裁判手続の中で,報道された側としては,報道した側が事実を証明でき
  ないことが明らかになるので,事実に白黒をつけるということですね。


前田 そればかりではありません。

   むしろ,絶妙のタイミングと言ったのは今,訴訟提起することにより,
  報道は誤りだという自信と確固たる姿勢を表明し,世間の心証を白の方向
  にシフトすることができます。

   しかも,所属していた会社が一緒に裁判を起こすということになれば,
  見放されていないことが印象付けられる上,多数の売れっ子タレントを擁
  するこの会社の業界での影響力は絶大ですから,テレビ局やタレント達も
  うかつに島田さんが不利になるような発言や行動はできない。

   まさに「戦略訴訟」という側面が顕著です。


―― 島田紳助さんの請求が棄却されたことは,どのように考えればよいので
  しょう。


前田 そのことは,やや難しい考慮も必要なので,後日機会があったら,そっ
  とお知らせしましょう。


―― とりあえず,よいことばかりですね。


前田 そうとも言えません。安易な訴訟提起は自分を苦しめることにもなりま
  す。

   有名人が,公的地位や社会的地位を確保するという面では,状況と作戦
  次第で有効な手段となる場合があるということです。

   しかし,個人的には鉄のような強靱な意思が必要です。「人の噂も75
  日」といわれますが,多くの場合訴訟が終わる頃には世間は忘れています
  が,白黒がつくまでの間,本人の精神的負担はとても大きい。

   先ほどの市会議員の案件でも,当時としては高額の賠償額で勝訴しまし
  たが,心労が継続していました。

   訴訟を起こす場合は,その戦略としての役割と負担をきちんと検討しな
  ければなりません。