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0086【"白黒つけない"パワハラ対策】

2015年12月18日 14:58

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           弁護士前田尚一の理念


  "白黒つけない"パワハラ対策

 今回は,前・後編にわたり某企業の部長A氏からの相談を紹介します。

 対岸の火事ではない「パワハラ」がキーワードです。

 

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A氏 「パワー・ハラスメント」は「セクハラ」と同様,加害者本人だけでな
  く会社も損害賠償責任を負うのでしょうか。

前田 はい。
   使用者責任(民法715条)や職場環境配慮義務違反(労働契約法5条)
  に基づきます。

   ちなみに厚生労働省が2012年1月に公表した「職場のいじめ・嫌が
  らせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」では「職場のパワ
  ーハラスメントとは,同じ職場で働く者に対して,職務上の地位や人間関
  係などの職場内の優位性を背景に業務の適正な範囲を超えて,精神的・身
  体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と示されています。

A氏 しかし,裁判例をみても損害賠償義務が発生する場合とそうでない場合
  があり,また,その基準が「・・・を総合考慮のうえ」とか「・・・職務上の地
  位・権限を逸脱・濫用して,社会通念に照らした客観的な見地から見て」
  などと抽象論ばかりでよくわかりません。

前田 そうですね。
   ハラスメントの範囲は曖昧です。その一方で,職場であっても上司によ
  るものではないとか,陰湿な非有形力によるものが「パワハラ」と区別さ
  れた「モラル・ハラスメント」(モラハラ)も社会問題化しており,違法
  対象は拡大されつつあります。

   裁判所は社会問題化されたことを扱うとはいえ,その本来の役割は実際
  に訴訟となった特定の事案について事後的な客観的判断によって白黒をつ
  けることです。

   つまり,裁判所に日々現場で起こる事案の明確な判断基準の提示を期待す
  ることが間違っているのです。

A氏 それでは予防も解決もできないじゃないですか。

前田 いいえ。
   むしろ企業は白黒つけようとする発想を捨てたほうがいいです。

   単に違法かどうかという面ばかりに目を奪われず,加害者対被害者とい
  う単純な図式で捉えられ一人歩きしかねないトラブルをどう回避するかが
  重要です。

   ハラスメントは被害者側の主観に大きく左右されることは否定できませ
  ん。

   またパワハラはメンタルヘルス問題にもつながり易く解決の難しさがあ
  ります。

   しかもブラック企業と烙印を押されてしまうと,人材採用も妨げること
  にもなりかねません。

   だからこそ綿密に対策を練る必要があります。

A氏 当社では,労務コンサルタントの指導を受けながら,従業員対象にセミ
  ナーを実施したり,相談窓口を設置したりして事前措置に万全を期してい
  るのですが・・・。

前田 もしやパワハラ問題が現実に発生したのではないですか。
   その解決策も含め,根本的に考え方を改める必要がありそうですね。

   その点は次回。