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お知らせ

メルマガ【弁護士前田尚一の「本当は怖い身近な法律問題」】の新作を発行しました。

2009年10月21日 20:33

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     本当は怖い身近な法律問題 vol.5 2009.10.20【訂正版】
           http://www.smaedalaw.com/
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 皆さん、こんにちは。札幌の弁護士,前田尚一です。
 8月7日に第1号を配信して以来(後半にバックナンバーをご紹介いたしま
す。初めての方は是非ご覧下さい。)お陰様で,号外速報版も含め,7回発行
できました。

 さて,今回のお題ですが,「更新料」のお話しをすると予告しましたが,
ネット上で47都道府県52新聞社と共同通信新聞社がニュースを提供している
「47NEWS(よんななニュース)」に格好のニュースを見付けましたので,これ
を素材にお話しします。

 なんと言っても,ニュースとして「旬」ですし,たまたま,このメルマガの
創刊号で取り上げた話題と共通する場面であること(ただし,コンセプトは違
います。)に加え,「更新料」をとりあげてお話ししたいことの基礎編となる
テーマを含む事例ですので,先に取り上げたのです。

「落とし主に謝礼求め提訴 通帳拾った新潟の男性」と言う見出しの記事です。
 ⇒ http://www.47news.jp/CN/200910/CN2009101901000721.html

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 ある男性が預金通帳や印鑑が入ったかばんを拾いました。
 この預金には,1700万円以上の残高がありました。
 この男性は、謝礼の支払いがないのは遺失物法違反だとして、裁判所に,落
とし主に255万円の支払を求める訴訟を起こしたというのです。

 さて,遺失物法には,次のような定めがあります。

 (報労金)
 28条 物件(誤って占有した占有した他人の物を除く。)の返還を受ける
 遺失者は,当該物件の価格(第9条第1項若しくは第2項又は第20条第1
 項若しくは第2項又は第20条第1項若しくは第2項の規定により売却され
 た物件にあっては,当該売却による代金の額)の100分の5以上100分
 の20以下に相当する額の報労金を拾得者に支払わなければならない。
 2(以下略)

 例によって,法律の条文というのは,くどくどと分かりにくい書き方ですが,
 要するに,
 遺失者(落とした人)は,拾得者(拾った人)に,物件(落とした物)の価
格のは5%から20%の範囲の報労金(御礼)を支払わなければならない,と
いうことです。

 要約すると,一見分かりやすいのですが,実際トラブルになると,とても難
しい問題が発生します。

 (1) 「物件の価格」とは,どのように決めるのでしょうか。
 (2) 「5%から20%」の幅がある中で,どうやって割合を決めるのでし
ょうか。

 これらについては,法律には何も定められていないのです。

 通帳を拾った新潟の男性は,1700万円の残高がある預金通帳の価格を1
700万円であると主張し,その15%である255万円の報労金の支払いを
求めたのです。

 「物件の価格」とは,どのように決めるのかという点((1))ついて,遺失
物が現金であれば,話は簡単です。1700万円の現金の「価格」は,誰が考
えても,1700万円と考えるでしょう。

 しかし,1700万円の残高がある預金通帳の「価格」は1700万円とい
うことができるのでしょうか(ただし,訴訟戦術上,損害額を高額にして請求
することはあります。後日,機会があれば,お話しします。)。

 裁判例を調べてみると,手形や小切手についての事例があります。

 例えば,11通の約束手形(額面合計2523万0300円)について,額
面の2分の1又は3分の1を「物件の価格」として報労金が算定した事例があ
ります(東京地裁平成3年5月30日判決)

 また,小切手の遺失物の価格を額面総額の100分の2と評価するのが相当
とするとした事例があります(東京高裁昭和58年6月28日判決)。
 この小切手は,日本銀行が振り出した小切手であり,なんと額面総額は78
億円を超えるものでした。日本銀行が振り出すのですから,不渡りというこは
ありえず,必ず現金化されます。つまり,使う分には現金と同様の機能を果た
すはずです。
 
 「5%から20%」の幅から,割合をどう決めるか((2))について,現金
の場合に次のような裁判例もあります。

 土地の売主が地中に4000万円の紙幣を入れたクーラーボックスを埋め込
み、その後探したが発見できないまま、この土地の売却先に引渡しました。そ
の後,第三者がこの紙幣が入ったクーラボックスクを発見したという事例です。
 裁判所は,この紙幣は遺失物にあたると判断したうえ,紙幣の発見者に対す
る遺失物報労金5パーセントが相当としました(高松地裁観音寺支部平成12
年7月17日判決)。

 上記の額面合計2523万0300円の約束手形については,報労金の額を
約束手形の価格(853万2317円と認定)の10パーとしました。
 また,78億余円の小切手については,小切手の価格(は1億5741万7
528円と認定)の5パーセントを報労金とするとしました。 

 以上の事例を見ると,現金以外の場合の物件の価格は,例えば,支払いをす
るところに措置を取るなど損害を防止するような手段がとれることも踏まえ,
遺失後,物件の性質に応じ第三者の手に渡って遺失者が損害を受ける危険性の
程度によって決めることになる。
 また,報労金の額を決める割合は,状況によってケースバイケースに考えて
いくというほかないので,裁判所が物件の価格等諸般の事情を考慮して決定で
きるというくらいまでしか,ルールを作ることはできないでしょう。

 手形や小切手は,これを用いて,拾った人などが,本人を装い支払いを受け
てしまうということもあるというだけではなく,ここでは詳しくは述べないけ
れど,「善意の第三者」という言葉が使われるように,第三者が権利そのもの
を正当に取得する場合もあります。

 これに対し,預金通帳は,預金の払戻を受ける際に証拠として必要だという
ことであり,第三者が預金残高を正当に取得するということはありえず,手形
や小切手の場合と比べ,遺失者の危険性のレベルは低いということができます。
 また,価値が高ければ,報酬額を決める割合も少なくなるということも納得
できるでしょう。

 しかし,このように,一応の枠組みも見えてはきますが,いくら頑張ったと
ころで,自動的に金額とか割合が決まる基準をたてることができるわけではあ
りません。
 つまり,裁判となった場合,結局は,裁判官の判断次第ということになるの
です。
 しかし,裁判官が皆似たような考え方で判断するのかというと決してそうで
はありません。

 遺失者と拾得者の間で御礼をどうするかということは,借りたお金は返さな
ければならないという場合と対比して考えると,本来は,社会常識で決めるべ
きものとも言えそうです。基本は,拾ってもらって助かったという逸失者の感
謝の気持ちです。
 しかし,ドケチな逸失者もいるでしょう。また,御礼を過大に要求する拾得
者もいるかもしれません。偶然拾った拾得者にとっては,不労所得,あぶく銭
ということになるでしょう。

 こうして,遺失物法が,上記のとおり,一定の基準を定めているのですが,
遺失者と拾得者の間のトラブルに,幅をもうけているので,やはり,今述べた
ような逸失者,拾得者の立場や利害関係をどのように考えるかという判断が必
要であり,裁判官の価値観,人生観に基づいた主観的判断,直感が入ることは
避けられません。さらには,恣意的な判断が入らないという保障はないのです。

 ただ,遺失物についての事例の場合は,事案毎と特殊性を並べると,ケース
バイケースということで,事案としては,裁判官の個性が目立たないこともあ
るでしょう。

 しかし,良い悪いは別として,「更新料」についての裁判例をみると,裁判
官の価値判断がストレートに反映したものということができそうです。
 では,また,次回。

 なお,遺失物法は改正され,新しい遺失物法が,平成19年12月10日に
施行されていますが,報労金の決め方については変わっていません。
 ⇒ http://www.pref.nagano.jp/police/keimu/is/kaisei.htm

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本号までのバックナンバーのご紹介
○vol.1 2009.8.7
 新人ホテルマンA君、そして経営者であるホテル会社に、突然やって
きた『法律問題』・・・【問題編】
 ⇒ http://archive.mag2.com/0001001640/20090808100000000.html
○号外速報版 2009.8.13
 寄稿「裁判員ドラマの『主人公』酒井法子容疑者の犯罪」などのご紹介
 ⇒ http://archive.mag2.com/0001001640/20090813132000000.html
○vol.2 2009.8.18
 新人ホテルマンA君、そして経営者であるホテル会社に、突然やって
きた『法律問題』・・・【解決編】
http://archive.mag2.com/0001001640/20090818234612000.html
○vol.3 2009.9.10
 気弱なP太郎君が,極悪人となるプロセス
 ⇒ http://archive.mag2.com/0001001640/20090909211203000.html
○号外速報版  2009.9.17
 寄稿「酒井法子被告が保釈 保証金の額で推測できるアイドルの経済力」
などのご紹介
 ⇒ http://archive.mag2.com/0001001640/20090917213404000.html
○vol.4 2009.10.8
 最高裁判所での口頭弁論前に,南門からの外階段を上るとき,思い切り
蹴躓(けつまず)いて,左足の親指を突き指した話と,勝敗を決める顧客の
「生命力」
 ⇒ http://archive.mag2.com/0001001640/20091008195618000.html

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 LEC東京リーガルマインドの札幌本校で,平成21年11月19日(木)
午後7時から,講演することになりました。
 お題は,『弁護士も経営戦略を考える時代~弁護士になれば食える時代は終
わった~』
   ⇒ http://www.smaedalaw.com/mt/2009/10/post-14.php

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○労働問題・労働審判 http://www.smaedalaw.com/company/labor.php 
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