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【BNN】裁判員制度反対のわけ

裁判員制度反対のわけ

裁判員制度

9月26日開催、「ちょっと待って!?裁判員制度」

 

 畏友猪野亨が、世話役となって裁判員制度実施を阻止しようとする会が結成した。賛同者となることを求められので、うっかり応じたところ、コメントを求められた(なお、本稿を読まれ、いささかでも関心を持たれた方は、「北海道裁判員制度を考える会」(011-272-9555 事務局:いの法律事務所内に問い合わせてください)。

 裁判員制度は、一般市民に、殺人、傷害致死等の重大犯罪の刑事裁判に参加してもらい、有罪か無罪か、有罪の場合どんな刑を科することにするかを、職業裁判官と一緒に、きめてもらう制度だ。

 反対論者も、これまでの職業裁判官による裁判が、あるべき姿と考えているわけではない。職業裁判官による裁判が国民の一般感情から遊離しているという批判がある中、「国民の司法参加」の実現というと聞こえはよいが、 その場限り呼び出された市民が参加したからといって、事実認定が真実に近づく保障はない。一般市民の良心に頼るほかないが、誤審があったとしても、国民自身が決めたことだから仕方がないと評してあきらめるほかない(もっとも、裁判員制度の採用は、地方裁判所だけで、上級の裁判所である高等裁判所、最高裁判所では採用されていない。実は、裁判員が参加して出した結論を、高等裁判所で職業裁判官が破棄できるのである)。加えて、一般市民の負担も大きい。反対論者は、このような負の側面を指摘したうえ、国民の8割もが反対する中、十分な吟味・検討をしないまま、裁判員制度を強行することを批判する。

 反対論者の指摘する問題点に付け加えることはないので、私は、若干視点をスライドし、次のようなコメントを寄稿した。 

 (コメント始まり)
 
 制度や機能の面からの裁判員制度の不適切さは、賛同者の皆様の御意見のとおりであり、付け加える点はありません。

 ただ、弁護士という立場で付け加えたいことがあります。公式の、あるいは世間向けの場では、裁判所、検察庁、弁護士会の確立した見解が、積極的な肯定論であるかのように歩いています。

 しかし、私の接する機会に限られますが、非公式に意見を聞くと、否定論、修正論、廃止予想論等々、弁護士に限らず、裁判官、検察官も含め法曹の個々の方々の本音は、公式見解(公式的見解?)との間に大きな隔たりがあるように思えるのです。

 立場上からの建前と本音を使い分けたことの悪弊は、法曹人口問題で顕著です。

 法曹人口増員=弁護士数激増という流れが、国民にとって決して良いことにならないことが明らかであったのに、方向付けのその瞬間、建前と本音を使い分けました。そのため、今、弁護士自身が、弁護士数激増に伴う弊害についての正論を言っても、国民には、弁護士の保身のための詭弁であるとしか思われないようになってしまいました。

 裁判員制度の是非について、職業的に裁判に携わる者として個々の弁護士も、タイミング良く、弊害を阻止・緩和出来る早い時期に、本音に属する意見を明らかにしておく問題であると考えます。

 (コメント終わり)

 司法制度改革による変容は、極端なうえ急激だ。

 10年ほど前に寄稿したものにも、時代の流れという抽象的な予見はあったが、実際に起きた具体的な出来事は、予想もしていなかったことばかりだ。

 「"ステラ事件"の損害について判断。被告に対し、"6400万円を支払え"との賠償命令!!」(初出:札幌青年会議所広報誌平成9年10月27日発行)

 「裁判に時間がかかるのは」(毎日新聞平成11年10月30日朝刊)。

 それだけに、その負の部分が顕在化したら、そう簡単に修復することなどできないであろう。

 弁護士が増えたからといって、裁判所の法廷の数や裁判官も増えなければ、1件の審理する時間が減るだけで、拙速になる心配がある。そして、弁護士が増えれば、"食うために"安易に起こす裁判も増えるのが必定であり、かえって粗雑になりかねない。弁護士の良心だけに委ねることは難しい。

 ところで、裁判員制度といえば、上戸彩の"締切"だ(まもなく配布されなくなるパンフレット)。その話題を、次回のBNN「弁護士M法律小咄」に寄稿予定である。

 


前田尚一弁護士

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