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知っ得「法律」情報

滞納家賃の取立てを規制する法律ができる!?

 5月29日の朝日新聞朝刊は,《玄関に家賃催促状,違法 大阪地裁「滞納はプライバシー」》という見出しの記事を掲載しました。

 滞納家賃の支払いを求める催促状を自宅玄関に張られ精神的苦痛を受けたとして,大阪府柏原市の会社員の男性(29)が家賃保証会社に110万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が28日,大阪地裁であり,裁判官は「家賃の支払状況はプライバシー情報で,不特定の人に知られる状態にするのは名誉を損ねる違法な取立てだ」として,保証会社に慰謝料など6万5000円の支払を命じた,とのことです。

 取立てといえば,消費者金融や中小企業金融の専売特許のようなイメージでしたが,最近では,滞納家賃についても社会問題化しています。平成20年の家賃債務保証をめぐる消費者トラブルに関わる相談件数は,平成16年に比べ10倍以上に増加しているとのことです(国民生活センター)。

 滞納家賃の取立てを規制する法律は,これまでなかったのですが,昨年11月3日福岡地裁は午後以降の取立てを違法と判断し,12月13日大阪地裁が,鍵交換は違法と判断するなどしていました。

 鳩山内閣のごたごたで影響があるかもしれませんが,「追い出し規制法案」(通称)が,6月にも成立する見通しとなっていました。
 正式名称は,「賃借人の居住の安定を確保するための家賃債務保証業の業務の適正化及び家賃等の取立て行為の規制等に関する法律案」です。


 新しい法律は,家賃債務保証業者の業務の適正な運営の確保を図ると共に,家賃等の悪質な取立て行為を排除すること等により,家賃住宅の賃借人の居住の安定確保を図ることが目的とされ,
  1 家賃債務保証業の登録制度
  2 家賃等弁済情報データベースの登録
  3 家賃等の悪質な取立て行為の禁止
が,法規制の三本柱とされています。

 3について禁止行為とされるのは,
 (1)面会,文書送付,貼り紙,電話等の手法を問わず,人を威圧すること
 (2)人の私生活又は業務の平穏を害するような言動
 です。

 そして,鍵の交換等(ドアロック),動産の持ち出し・保管,深夜・早朝の催促,これらの行為を予告することがあげられており,違反した場合は,罰則があり,最高2年の懲役刑が課せられることになっています。


 私は不動産業者の顧問弁護士もしており,現実問題として,家賃を滞納し目に余る賃借人も少なくないのも事実。
 しかし,ある意味では当然,しかし,ある意味では余り大きな声では言われなかったたこと,どんなに滞納しても賃借人に守るべき権利があることが正々堂々と確認されることとなったのです。

 新しい法律は,「追い出し規制法案」が通称とされ,「追い出し屋」との関係で報道されることもあります。
 しかし,新しい法律は,暴力団やこれに類する者だけではなく,家賃債務保証業者のほか,住宅の賃貸事業者,賃貸管理業者も対象とされています(取立ての委託先も含む。)。

 きちんとした不動産業者であっても,従来からの思いにとらわれ,ウッカリ甘く考えると,大変なことになることを胆に命じなければなりません。 

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