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コラム

弁護士:前田尚一: 2010年2月アーカイブ


 企業が管理している個人の情報が流出したら,企業はどのような責任を負うかということにいてをお話ししようと思います。

 参考となる裁判例として,宇治市住民基本台帳データ流出事件があります(大阪高裁平成13年12月25日判決)。
 

 宇治市は,住民基本台帳データ(住民票データ)を利用して乳幼児検診システムの開発を企図し,約20万人分のデータに係る開発業務をA社に委託しました。
A社は,宇治市の承認を得て開発業務をB社に再委託したところ,B会社は,宇治市の承認を得ないまま,C社に開発業務を再々委託しました。
 ところが,C社のアルバイト従業員Dは,データをハードディスクにコピーしたうえ,MDにコピし,名簿業者E社に25万8000円で売却してしまったのです。
 そして,E社は,このデータを加工して名簿として251人分のデータを販売したのです。

 本件では,宇治市はB社との間で,などを含む業務委託契約を結んでいました。そして,宇治市は,再々委託を承認してはいませんでした。
 インターネット上で購入を勧誘する広告が掲載されましたが,データがインターネット上に掲載されて閲覧できるようになったわけでもなく,具体的な被害はありませんでした。
 そもそも,流出した情報も,当時は,住民基本台帳法で,何人でも閲覧できることになっておりました。

 しかし,それでも,裁判所は,宇治市の責任を認め,住民から宇治市に対する損害賠償請求を認めました。
 賠償額を算定する前提として,一人当たり慰謝料1万円と弁護士費用5000円と認定しています。
 
 この事件は,地方公共団体に関するものですが,賠償額のいわば単価を考えるうえで一般企業の場合にも参考になります。

 読者の方々の中には,安いと思われた方もたくさんいるかもしれません。
 しかし,この額は,具体的な被害が認定されない場合に認められたものであり,被害が損害と認められればその分も加算されます。

 そして,そうでなくとも,本件でもし扱ったデータ20万人分すべてに損害を賠償しなければならない事態になっていたとすれば,その賠償額は30億円に及ぶことになります。
 
 企業によっては,倒産を余儀なくされるという事態も想定される深刻な場面となります。
 今日では,一旦不祥事が発覚すると,社会的責任や道義的責任までも徹底して追及されることになります。引責辞任はもとより風評被害といった社会的制裁に及ぶことも少なくありません。雪印集団食中毒事件を発端としてグループの解体・再編を余儀なくされた雪印企業グループの例は衝撃的なことでした。

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 しかし他方,法令遵守を徹底することが,企業価値を高めることになるということも否定できないことです。

 一旦不祥事が発生した後の対応の事例ですが,個人情報流出事件として,51万人分の顧客リストが社外へ流出したジャパネットたかたの場合が有名です。
 同社の売上げは,前年705億円でしたが,この事件が起きた2004年には663億円にまで落ち込みました。しかし,同社の売上げは2006年には1000億円を超え,2008年には1371億円となっています。
 同社は,事件発覚後,テレビや新聞で謝罪を繰り返し続け、消費者に対し適切な対応をしたことが評価されており,かえって企業イメージを向上させた好例です。


 以上は,日本では,法令遵守を意味するとされる「コンプライアンス」がどのような考え方であるのか,なぜその考え方が重要視されるようになった理由との関係ということからお伝えすべきところですが,また機会があればということでご容赦下さい。

酒井法子の「その後」

前田尚一弁護士

前田尚一弁護士

プロフィール

 

 文春か、新潮の新聞広告か、地下鉄のつり革広告があれば、きっと立ち読みしてしまう。

 しかし、そんな広告がでない限り、もうすでに「酒井法子」のことは忘れている。

 女子大生殺人事件はどうなったのか?

 毒カレー殺人事件の被告人は死刑になったのか?

 夫バラバラ殺人事件の被告人はどうなったのか?

 一家皆殺しの被告人はどうなったのか?

 ホリエモンはともかく、村上某は今何をしているのか?

 離婚詐欺事件の殺人も疑われていたもう一人はどうなったのか?

 逃亡していた英国人英語教師殺人犯人は、その後どうなったのか?

 私たちは、事件が起きるたびに、国民全員で一斉に憤りを覚え、世の行く末に不安を唱える。

 しかし、1年前、否、半年前、いやいや3か月前の事件を思い起こそう。

 残念ながら、記憶のかなたにいっている。

 今、政治家はもちろん、あの孤高の存在であった裁判所ですら、国民の意見を無視するとの非難に過敏症となり、常に世間を意識する時代になった。

 我々国民は、国政すべてに、極めて強い力を持つに至った。

 もはや、ひな壇にいるエリート、裁判官にさえ大きな影響力を与えることができる・・・・・・。

 しかし、それは、一時の高揚を吸収してもらっているだけで、場面によっては、利用されているだけではないか。

 今、私たちは、自分を「弱い者」と位置づけている場合ではなく、世の動きを見据え、自分の意見を的確に述べなければならない時代になっているよう思えるのだ。

 今回は、小沢問題について寄稿しようと原稿を書いているうちに、ふと噴火して感じたことを寄稿させていただいた。

 

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