AIを使って調べ、専門家にも相談した。
それでも、「結局どうすればよいのだろう」と迷ってしまう。
そのような経験はありませんか。
AIについて語られるとき、「技術を理解することが重要だ」と言われることがあります。
しかし最近では、「技術よりも業務理解が重要だ」という議論も増えてきました。
その指摘には私も賛成です。
ただ、実務の現場では、業務を理解していても判断に迷う場面が少なくありません。
業務を理解するだけでは足りない。「この局面で何を選ぶか」との判断は残る
AIの進化について語る人の中には、
「重要なのはAIそのものではなく、対象となる業務を深く理解することだ」
と指摘する人がいます。
その考え方には大いに共感します。
実際、法務であれ、人事であれ、営業であれ、
現場の仕事が何によって動いているのかを理解しなければ、AIを有効に活用することはできません。
AIの性能だけを見ていても、現実の仕事は変わりません。
現場で何が起きているのか。
人は何に悩み、何を処理し、どこで時間を使っているのか。
その理解がなければ、どれほど優れた技術も実務には結びつきません。
ここまでは、多くのAI論者と同じ考えです。
しかし実際の相談では、知識や情報だけでは結論が出ない場面があります。
最後には、誰が何を優先し、どの方向へ進むのかを考えなければならないからです。
例えば、少数株主の株式売却案件で考えてみます。
会社法、税務、会計、株価評価。
これらを理解していることはもちろん重要です。
しかし、実際に案件を動かす場面では、
・株主は本当は何を望んでいるのか
・経営者はどこまで譲歩できるのか
・親族関係はどうなっているのか
・今売却するべきなのか
・交渉で終えるのか訴訟も視野に入れるのか
こうした点を整理して初めて、自分に合った方向性を考えられるようになります。
建設請負紛争でも同じです。
契約書を読むことはできても、
・今提訴するべきか
・仮差押えをするべきか
・交渉を継続するべきか
・どこで損失を固定するべきか
どの対応が現実的なのかは、状況全体を見ながら考える必要があります。
実務で問題になるのは、「正しい情報」であることばかりではなく、
「最終的にどのリスクを引き受けるかを誰が決めるのか」という点です。
実務の現場では、専門家の意見が不足しているというよりも、集まった情報をどう整理し、どの方向へ進めばよいのかで迷われる場面が増えているように感じます。
専門知識そのものは、AIによって以前より容易に取得できるようになりました。
業務理解も、AIの助けによってかなり補えるようになるでしょう。
しかし、
「この局面で何を選ぶか」
という判断だけは、最後まで残り続けるように思います。
AI時代になるほど、
知識の価値がなくなるのではありません。
知識を使って何を決めるのか。
その判断の価値が、これまで以上に問われるようになるのだと思います。
AIは情報を集めたり整理したりする助けになります。
しかし、その情報を踏まえて自分に合った方向性を考えることは、人が行う必要があります
当事務所では、法律的な見通しをご説明するだけでなく、状況や選択肢を整理し、依頼者の方が納得して判断できるよう、一緒に考えることを大切にしています。
情報が増える時代だからこそ、重要なのは知識を増やすことだけではありません。
状況を整理し、自分に合った判断ができる状態を整えることが、これまで以上に大切になっていると考えています。
当事務所では、
目の前の法的正解だけではなく、
初動・情報整理・損失配分・将来維持可能性を含めた現実判断を重視しています。
実際の紛争や経営判断では、初動で何を整理し、何を守り、何を優先するかという判断が、その後の結果を大きく左右します。
そのため、法律的な見通しをご説明するだけでなく、状況や選択肢を整理し、依頼者の方が納得して判断できるよう支援することを大切にしています。
【関連記事】
▶ AI時代に最後まで残る「判断」と、判断主体・結果責任についてはこちら
▶ その判断を実務上どのような構造で整理するのかについてはこちら
【本稿の位置】
本稿は、「AI時代・前提理論」系列において、
AIや専門家による業務理解の問題から、
「判断構造・実務論」へ移る接続点に位置する。
【AI時代・前提理論|記事相互関係】
260528-2
翻訳型実務者
〔問題提起:専門知識を現実の判断へ移す者〕
↓
260603-2
なぜ専門家が増えても問題は解決しないのか
〔環境変化:専門家不足から判断者不足へ〕
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260614
AI時代に増える入口と、最後に残る判断の問題
〔系列の到達点:AI時代に残る価値〕
↓
260615
AI時代に足りなくなるのは専門家ではない。
「業務理解」の先にあるもの
〔AI時代の実務から判断構造への接続点〕
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260617
AI時代に最後まで残るのは「判断」
〔判断主体・結果責任への到達〕
↓
260617-3
法律問題を解く前に、判断構造を整理する
〔次系列「判断構造・実務論」の入口〕
※この系列は、
専門家不足
↓
業務理解
↓
判断主体
↓
結果責任
という論理構造で構成されています






